(3)財産に「宛名」をつけることができる

2019生命保険を活用すれば、特定の相続人に、より多くの相続財産をよりスムーズに残すことが可能になります。「財産に宛名を付ける」と言い方があるのですが、いってしまえば“えこひいき”ができるわけです。

たとえば、長年父親を介護している長女がいるとします。民法では、この貢献に対して、寄与分(きよぶん)と呼ぶ、法定相続分以外の財産を与えるものと規定されています。

ですが、いざ相続が発生した際に、他の法定相続人が、この長女の寄与分を認めることはまずない。もし、長女の寄与分を認めれば、自分が相続できる財産が減ってしまうからですね。

調停や審判まで発展した例でも、寄与分は立証が難しいので、これが認められた身近な例を私は知りません。生前に遺言書に記しておけばいいのですが、ちゃんとした遺言書を作成するためには弁護士や司法書士に依頼するなど手がかかります。

そのような手間をかけなくとも、長女に感謝している父親が、より多くの財産を長女に残す手段はあります。それは、父親が、自分を被保険者とした生命保険を契約し、受取人を長女にしておくのです。

死亡保険金は、「みなし相続財産」として、相続税の課税対象になります(といっても、500万円×法定相続人の数までは非課税)。しかし、それは税法上の話で、本来は、民法上、死亡保険金は受取人固有の財産です。そもそも相続財産ではないので、遺産分割の対象になることもありません。被相続人がなくなり相続が開始されれば、すぐに現金を受け取ることができます。死亡保険金を受け取ったからといって、遺産分割が減らされるということがありません。

このように、生命保険を活用すれば、特定の相続人に確実に財産を遺すことができるのです。

(2)生命保険はすぐに現金化できる

被相続人が亡くなり、相続が開始された当初は、なにかと現金が必要なものです。

代表的には、葬儀費用。家族葬で100万円、一般葬で120万円かかるといわれています。

しかし、被相続人の預貯金口座は、金融機関が被相続人が亡くなったことを知った時点で凍結されます。また、凍結以前に被相続人の口座に手を付けると、相続放棄ができなくなるなどのリスクがあります。

他方で、死亡保険は、手続きさえすませば、即座に現金化できます。生命保険は、指定された受取人の固有の財産ですから、遺産分割の対象になりません。すぐに受取人の手元に現金がはいるのです。生命保険を受け取ったからと言って、遺産分割の取り分が差し引かれるということも原則ありません。

相続財産が、土地などが大半を占める場合、相続財産から納税資金を賄うのも容易ではありません。それらを売却して納税資金にあてようと思っても時間がかかるでしょう。しかし、相続税の期日は待ってはくれません。一日でも遅れれば追徴課税されます。

その点、生命保険は即現金化されますから、納税資金の確保にもなります。

(1)生命保険の非課税枠を利用する

生命保険は本来、民法上、受取人の固有の財産であり、「相続財産」ではありません。しかし、税法上、死亡保険金は、「みなし相続財産」とされ、相続税の課税対象となります。

しかし、生命保険は、相続対策として非常に有効です。

というのは、生命保険には、非課税枠があり、その枠内の金額であれば、課税されることがありません。では、生命保険の相続税上の非課税枠はいくらなのか?

500万円×法定相続人の数が、生命保険の非課税枠となります。たとえば、配偶者と子2名が法定相続人の場合

500万円×3名=1,500万円が非課税枠となります。

現金で1,500万円を相続すれば、もちろん全額課税対象ですが、その現金のいくらかでも生命保険の活用にまわせば、有効な相続対策となるわけです。